ビートルズのイメージを一新した珠玉のラブ・バラード
ポールの作品。彼は最初メロディーだけを作り、「スクランブルド・エッグ」というタイトルをつけていた。その後、「イエスタデイ」という言葉が浮かび、そ のイメージで歌詞を書き上げた。R&Rバンド、ビートルズの面目を一新した素晴らしいラブ・バラードである。ビートルズの音楽を単なる”騒音”と して嫌っていた人々がこの曲の出現によってビートルズに対する考え方を変えていった。
1965年8月6日に発売された5枚目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『4人はアイドル』のB面6曲目に収録されている。レノン=マッカートニーの作。実質的にはポール・マッカートニーの作品である。リード・ヴォーカルはポール。
弦楽四重奏をバックにしたアコースティック・バラードをビートルズ名義で初めて発売した曲であり、数あるビートルズ・ナンバーの中でも人気の高い作品のひとつである。世界中のミュージシャンに数多くカヴァーされており、ビートルズ活動時点で既に1,000を超えるカヴァー・ヴァージョンが存在し、現在では正確なカバー数は把握困難である。「世界で最も多くカヴァーされた曲」としてギネス・ワールド・レコーズに認定されている。英国BBC4が2012年に放送したドキュメンタリー番組 「ザ・リッチエスト・ソングス・イン・ザ・ワールド」の中で、音楽史上最も稼いだ10曲を選出し、イエスタデイが4位にランクしている。
1999年の英国BBCラジオ2の世論調査で、20世紀の最高のベストソングに選ばれ、翌2000年には、ローリングストーンとMTV共同のグレイテスト・ポップソング100の1位に選ばれた。
「ロックバンドがスリーコードやロックンロールのメロディにとらわれない作曲を行なった」「ロックバンドがストリングスを使用した」として高く評価された。ビートルズは、この試みの走りとなり、次第にアーティスト集団として見られるようになっていった。この曲は、現在では「ヘイ・ジュード」と共にに主に日本の中学校・高等学校の音楽の教科書に採用され教材になっている。
ポールは、この曲が出来た経緯を「睡眠中に夢の中でメロディが浮かんだので急いでコードを探してスタジオで完成させた。作ろうとおもってできるメロディじゃないよ。あまりにも自然に浮かんできたものだから、別の誰かの曲のメロディなんじゃないかと思って、みんなに聞かせて回ったけど、誰もこのメロディを知らないみたいだったから、僕のオリジナル曲だと認識した」と述べている。
『イエスタデイ』でついてジョン・レノンは「もちろんあれはポールの歌でポールの秘蔵っ子さ。よくできてるよ。ビューティフルだよ。でも俺が作っときゃ良かったと思った事は一度もないね。ただ、この曲では俺も散々褒められたけどね」と語っている。睡眠中(朝食前)にメロディが浮かんだので朝食のイメージから作曲当初に書いた “Scrambled Eggs,oh my baby how I love your legs?” (歌詞の一節を取って曲名は”Scrambled Eggs”)という歌詞を約2週間後に”Yesterday,all my troubles seemed so far away” などと書き直し歌詞の一節を取って曲名を “Yesterday” とした(※ポールは歌詞の一節を取って曲名とする場合がほとんどである)。
「Yesterday」はポールの母に捧げた歌
歌詞の内容から「自分の元を去った恋人を想う歌」と解釈されていたが後にポールは「僕が14歳の時に乳癌で死去した母への想いを歌った曲である」と述べている。なおポールの母であるメアリー・パトリシア・モーヒン(1909年9月29日-1956年10月31日)は「子供達が大きくなるのを見たかったわ」と言い残し満47歳で死去している。
弦楽四重奏のアレンジは、プロデューサーのジョージ・マーティンによるものである。ポールは最初「ストリングスのアレンジをマントヴァーニみたいなことはお断りだ」と述べていたが「ではカルテットでどうか?」というマーティンの提案を受容して完成させた。2度目のサビで第1フレーズと第2フレーズの間にチェロが「ミーソーファミ」と奏するアレンジと、第3コーラスでヴァイオリンが非常に高い持続音を奏するアレンジはポールのアイデアによるものである。アコースティック・ギターとヴォーカルを担当したポール以外、他のビートルズのメンバー3人はレコーディングに参加していない。ポールは、ギターのチューニングを全弦1音下げでレコーディング。2テイク録音され第2テイクが採用された。
なおこの曲がコンサートで演奏される時には、ビートルズ時代はメンバー全員で演奏されるバンド形式のアレンジが行われ、ポールはヴォーカルとベースを担当し(スタジオ音源でポールが弾いたギター部分はジョン・レノンが演奏し、ジョージ・ハリスンはストリングスの部分をギターで演奏した)、稀にオルガンで伴奏することもあった(1966年の日本公演ではベースを演奏した)。
ビートルズの来日公演でも演奏されました
1966年6月30日から7月2日までの日本武道館公演において「イエスタデイ」も演奏された。ポールが曲を歌いだすと、突然今まで彼らに向けられていた歓声が止んだ。ビートルズの公演では異例なことで、ジョンも「突然クラシックコンサートのステージに立ったみたいで、緊張した」と述べている。ポールも「日本のファンは、マナーを守って僕らの曲を聴いてくれるので好感が持てる。親日家になったきっかけだ」と述べている。
「イエスタデイ」のシングル盤は1965年9月13日にアメリカで発売された。本作は英国では8月6日にアルバム『4人はアイドル』において発表済みではあったが、米国キャピトル編集盤 『ヘルプ(四人はアイドル)』(1965年8月13日発売)には「イエスタデイ」は収録されなかった。そのため米国では新曲扱いのシングル盤となっていた。ビルボード4週連続1位、キャッシュボックス誌では3週連続第1位を獲得。アメリカでは100万枚以上のセールスを記録している。B面は「アクト・ナチュラリー」。英国以外のヨーロッパ圏各国では「ディジー・ミス・リジー」のB面としてシングルカットされている。日本でもアメリカと同じカップリングのシングル盤はリリースされたが、「アクト・ナチュラリー」がA面であった。
イギリスではビートルズの活動中にはシングル・カットはなされなかった。ただし4曲入りEP『イエスタデイ』においてカット発売され、他国への輸出専用盤として上記の「ディジー・ミス・リジー/イエスタデイ」のシングル盤が製造されている。ビートルズ解散後の1976年3月8日、「恋する二人」をB面にして英国内販売用にもシングル・カットされた。なお日本ではこちらのシングル盤も販売されている。
「Yesterday」チャート最高順位
- 1位 (アメリカ)
- 10位(日本、洋楽チャート、1965年当時)
「Yesterday」収録アルバム
『4人はアイドル』
『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』
『オールディーズ』
『ザ・ビートルズ1962年〜1966年』
『ラヴ・ソングス』
『ビートルズ バラード・ベスト20』
『リヴァプールより愛を込めて ザ・ビートルズ・ボックス』
『20グレイテスト・ヒッツ』
『ザ・ビートルズ1』
『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』- 第1テイクとライヴ音源を収録。
『ラヴ』- イントロに『ブラックバード』のギターフレーズを加えたリミックス・バージョンを収録。
「Yesterday」歌詞
「Yesterday」和訳
昨日 僕の悩みは遠い空の彼方に
でも 今日はまた僕のもとへ
ああ 信じていたい 昨日を
突然 僕は今までの僕でなくなった
暗い闇が僕に重くのしかかる
ああ 悲しみは突然やってきた
なぜ彼女は 行ってしまったんだろう
一言も僕に告げずに
僕がなにか傷つけるようなことを言ったのか
今はただ懐かしい 幸福だった昨日
昨日 愛はとてもたやすいゲームだった
でも今はどこかに隠れてしまいたい
ああ 信じていたい 昨日を
「HELP!」の収録曲(全14曲)
1. Help!( ヘルプ)
2. The Night Before(ザ・ナイト・ビフォア )
3. You’ve Got To Hide Your Love Away(悲しみはぶっとばせ)
4. I Need You(アイ・ニード・ユー )
5. Another Girl(アナザー・ガール )
6. You’re Gonna Lose That Girl(恋のアドバイス )
7. Ticket To Ride(涙の乗車券 )
8. Act Naturally(アクト・ナチュラリー)
9. It’s Only Love(イッツ・オンリー・ラヴ)
10. You Like Me Too Much(ユー・ライク・ミー・トゥ・マッチ)
11. Tell Me What You See(テル・ミー・ホワット・ユー・シー )
12. I’ve Just Seen a Face(夢の人 )
13. Yesterday(イエスタデイ )
14. Dizzy Miss Lizzie(ディジー・ミス・リジー)